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大阪地方裁判所 昭和55年(ワ)5127号 判決

原告

藤岡良美

被告

水本隆一

主文

一  被告は原告に対し、二二万一五九五円及びこれに対する昭和五五年八月一九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一申立

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、九八七万一六〇〇円及びうち金五二三万一六〇〇円に対する昭和五五年八月一九日から、うち金四六四万円に対する昭和五六年六月一七日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二請求原因

一  事故の発生

1  日時 昭和五四年一一月七日午後六時過ぎころ

2  場所 大阪市西成区鶴見橋一丁目一七番二八号先路上(以下「本件道路」という。)

3  加害車 普通乗用自動車(泉五六ね五二〇八)

右運転者 被告

4  被害者 原告

5  態様 原告が自転車を運転して前記番地先路上を北進中、前方路上に駐車中の自動車の背後から加害車が突如現われて南進してきて原告に接触しかけたので、原告はこれを避けるためあわてて左足を地面について自転車を停めたが、加害車に接触され、原告は後方にはねとばされた。ところが、加害車の運転者である被告は、原告が転倒しているにもかかわらずそのまま走り去ろうとしたので、原告は被告の態度に立腹し、加害車の前に両手を広げて立ちはだかり、加害車を停車させようとしたところ、被告は無暴にも立つている原告の身体に対して前後三回にわたつて加害車前部を打ちつけ、もつて原告を路上に転倒させたうえ、そのまま逃走した。

二  責任原因(自賠法三条)

被告は加害車を所有し、自己のため運行の用に供していた。

三  損害

1  受傷、治療経過等

(一) 受傷

左肋骨々折、頸椎及び胸髄の損傷

(二) 治療経過

入院

昭和五四年一一月一四日から同年一二月一六日まで富永脳神経外科病院

昭和五四年一二月一五日から昭和五五年二月一日まで大手前病院

通院

昭和五四年一一月八日から同月一三日まで富永脳神経外科病院

昭和五五年二月二日以降現在まで大手前病院

2  治療費 七八九〇円

ただし、荒武医院における治療費

3  逸失利益 八八六万三八〇〇円

原告は、本件事故当時、第一生命保険相互会社大阪南支店に外務員として勤務する傍ら、内職としてサンダル部品の加工及び贈答品の販売等に従事していたところ、本件事故による受傷のため、事故発生日から少なくとも昭和五六年七月末日まで稼働不能となり、次のとおり合計八八六万三八〇〇円の損害を被つた。

(一) 第一生命保険相互会社休職による損害 三一九万八六〇〇円

前記のとおり、原告は同会社に外務員として勤務し、一か月平均一五万二三八四円の収入を得ていたが、本件事故により、前記期間休業を余儀なくされ、少なくとも三一九万八六〇〇円の損害を被つた。

(二) 内職(サンダル部品加工)休業による損害 三三二万七五〇〇円

前記のとおり、原告は内職としてサンダル部品の加工を営んでおり、一か月平均一五万八一二八円の収入を得ていたが、本件事故により、前記期間休業を余儀なくされ、少なくとも三三二万七五〇〇円の損害を被つた。

(三) 内職(贈答品販売)休業による損害 二三三万七七〇〇円

前記のとおり、原告は内職として贈答品販売の仕事に従事し、一か月平均一一万一三二〇円の収入を得ていたが、本件事故により、前記期間休業を余儀なくされ、少なくとも二三三万七七〇〇円の損害を被つた。

2  慰藉料 一〇〇万円

原告は、本件事故により甚大な精神的打撃を受け、事故当時の恐怖感に連日脅かされて睡眠も不充分となり、現在ノイローゼが昂じて神経医の治療を必要とする状態にある。その苦痛はとうてい金銭に評価し難いが、少なくとも右金額を下ることはない。

5  本訴請求

よつて、原告は被告に対し、本件事故による損害賠償として九八七万一六〇〇円及びうち金五二三万一六〇〇円に対する訴状送達の翌日である昭和五五年八月一九日から、うち金四六四万円に対する請求拡張申立書送達の翌日である昭和五六年六月一七日から各支払ずみまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三請求原因に対する答弁

請求原因一の1ないし4は認めるが、5は否認する。

同二は認める。

同三の1は知らない。2は争う。3のうち、原告が第一生命保険相互会社大阪南支店に外務員として勤務していたことは認めるが、その余は争う。4は争う。

第四被告の主張

一  過失相殺

本件事故は、被告が加害車を運転し、幅員五・五メートルの人や車の交通量の多い道路を南進中、進路前方に駐車中の車両があつたため、これとの間隔に気を配り、やや前方注視を怠つた結果、折から北進中の原告の運転する自転車の発見が遅れ、直ちに急制動の措置をとつたが及ばず、加害車が殆ど停止すると同時に加害車の前部と原告の自転車の前輪が当たつたというもので、原告にも、加害車が接近するのを現認しながら現場を無理に通行しようとした過失があるから、損害賠償額の算定にあたり過失相殺されるべきである。

二  損害額の過大

原告が転倒したのは、最初に加害車前部と原告の自転車前輪が当たつたときだけであり、しかも原告の自転車はミニサイクルであつたから、十分足が地面に届き、軽く横に倒れたという程度のものであつた。しかるに、

原告は、多様な症状を訴えて、長期の治療を受けているが、原告の主張する左肋骨々折は虚偽であるし、腰部捻挫も本件事故と因果関係はない。

原告は、富永脳神経外科病院を退院後、昭和五四年一二月一五日から大手前病院に入院したが、同病院での検査の結果、原告は糖尿病に罹患している以外は他に全く異常のないことが判明した。したがつて、同病院退院後も原告は頭痛、腹痛、腰痛等各種症状を訴えて通院しているが、すべて単なる愁訴に過ぎず、客観的症状は皆無であり、また訴える症状にも変化はなく、治療内容も変つていないから同病院退院後の外科治療は、医学的には根拠のないものである。

原告は、本件事故による受傷のため、少なくとも昭和五六年七月末日まで稼働不能であつたと主張するが、前記のとおり、原告の症状は単なる自覚症状に過ぎないのであるから、原告の主張するような長期間にわたつて稼働不能ということはあり得ない。

三  損害の填補 一九〇万五〇六〇円

被告は、本件事故による原告の損害のうち、富永脳神経外科病院の治療費七〇万円、大手前病院の治療費八五万五〇六〇円を支払つたほか、三五万円を原告に支払つた。

また原告は、労災保険より、休業損害(給与仮払)として三九八万二一二五円の支払を受けたほか、ほねつぎ大学堂の治療費の支払を受けた。

第五被告の主張に対する原告の答弁

一  被告の主張一、二を争う。

被告は、原告の症状につき客観的症状が何も無いと主張するが、医師の検査の結果、原告には大腿、左膝、左アキレス腱の疼痛、左臀筋以下の筋力の低下、バビンスキー異常反射、左臀部、左膝部の疼痛、歩行時の右大腿後面の疼痛等の諸症状があることが診断されているものである。

二  被告の主張三のうち、本訴請求外の治療費富永脳神経外科病院分七〇万円、大手前病院分八五万五〇六〇円の支払があつたこと及び労災保険からほねつぎ大学堂の治療費の支払があつたことは認める。また、原告が労災保険から三九八万二一二五円の給付を受けたことは認める。

第六証拠関係〔略〕

理由

一  事故の発生

請求原因一の1ないし4の事実は当事者間に争いがなく、同5の事故の態様は後記四認定のとおりである。

二  責任原因

請求原因二の事実は、当事者間に争いがない。したがつて、被告は自賠法三条により、本件事故による原告の損害を賠償する責任がある。

三  損害

1  受傷及び治療経過等

成立に争いのない甲第四号証、乙第九、第一二ないし第一七号証、弁論の全趣旨により成立を認める甲第二、第三、第八、第九、第一九号証、証人永岡潤吉の証言及びこれにより成立を認める甲第七、第二〇号証、原告本人尋問の結果及びこれにより成立を認める甲第六号証、証人渡辺文子の証言によると、次の事実が認められる。

(一)  受傷

頭部外傷第Ⅰ型、左側頭部・右腰・左右大腿・右下腹部・左肩打撲、外傷性頸椎症(外傷性頸部症候群)、胸髄不全麻痺

なお、前掲甲第二号証記載の左下位肋骨挫傷、腹部内臓損傷の疑いとの点及び甲第四、第七、第八、第二〇号証、乙第一二、第一三号証記載の左肋骨々折との点は、前掲証人永岡潤吉の証言に照らし採用できない。

(二)  治療経過

昭和五四年一一月八日から同月一三日まで富永脳神経外科病院に通院(実治療日数不詳)。

同月一四日から同年一二月一六日まで同病院に入院。

同年一二月一五日大手前病院通院。

同月一七日から昭和五五年二月一日まで同病院入院。

同月二日以降昭和五七年七月五日現在まで同病院に通院加療中(なお、昭和五五年二月二日以降同年末までの実治療日数は二八日、昭和五六年一月一日以降同年七月一五日までの実治療日数は一四日)。

そのほか、荒武医院、芦原病院に通院し、また、柔道整復師ほねつぎ大学堂に通院して、指圧、マツサージ療法を受けた。

(三)  自覚症状等

ところで、原告は、受傷後、頸部・左右肩部・腰部・左右下肢痛をはじめ、腹痛、下肢のしびれ感(痛覚・触覚鈍麻)、けいれん、嘔気、頭痛その他多様な症状を訴えているが、大手前病院でのレントゲン検査の結果によると、肋骨々折はもとより、頸・胸椎についても他覚所見は認められず、また、腰椎穿刺による脊髄液検査の結果にも他覚所見は見られなかつた。しかし、諸種の知覚検査、筋力検査等の結果を総合すると、原告の愁訴に副う所見も得られたので、同病院では外傷性頸椎症、胸髄不全麻痺、糖尿病(同病院に入院中、原告が中等程度の糖尿病に罹患していることが発見された。なお、これは外傷に起因するものではない。)と診断し、牽引療法、局部の神経ブロツク、点滴、内服治療等を行い、その結果、原告の症状はある程度軽快するに至つたので、前示のとおり昭和五五年二月一日同病院を退院した。ところが、その後も原告は、下腹部痛、両側臀部痛、両下肢痛、左大腿・左膝・左アキレス腱の疼痛、右大腿部痛、腰痛、頭痛等局所の痛み、だるさあるいはしびれ等多彩な症状を訴えるので、担当医師は牽引、湿布、神経ブロツク、内服等各種の対症療法を続ける一方で、同年四月二五日原告が柔道整復師の治療を受けることの同意証明書を発行し、以後各種施療を継続しているが、昭和五七年七月現在に至つても原告の愁訴はなお続いている。ところで、担当医師の診察によると、原告の愁訴からみて、原告の症状には神経症の疑いも濃いので、同医師は、本件交通事故による損害賠償問題が解決しない限り原告の愁訴は今後も長引くであろうとの診断を下している。なお、同医師によれば、原告の症状固定時期は、昭和五五年四月二五日ころとされている。

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2  損害額

(一)  治療費 七八九〇円

前掲甲第六号証及び原告本人尋問の結果によると、原告は荒武医院における治療費として右金額を要したことが認められる。

(二)  逸失利益

(1) 事故当時における原告の収入額について

原告は、本件事故当時、保険外務員の仕事による収入が一か月平均一五万二三八四円、内職であるサンダル部品加工による収入が一か月平均一五万八一二八円、同じく内職の贈答品販売による収入が一か月平均一一万一三二〇円合計一か月平均四二万一八三二円の収入があつたと主張する。ところで、成立に争いのない甲第一〇ないし第一三号証、弁論の全趣旨により成立を認める甲第五、第一四、第一五号証、第一六号証の一ないし一〇及び原告本人尋問の結果によると、原告は、昭和八年八月五日生の女子で、本件事故当時、昼は第一生命保険相互会社南支社に生命保険募集員として勤務する傍ら、自宅でサンダル部品の加工(ミシンかけ)及び贈答品の販売等の内職を行なつていたことが認められるところ、右労働による原告の収入について、前掲証拠中には右主張に副うかの如き記載が存在する。しかしながら、まず、贈答品販売による収入の点につき検討を加えると、前掲甲第六号証によれば、右労務は原告が一人で行なつているものではなく、原告の夫が商品の仕入を行ない、原告は販売を担当していたものであることが認められ、そうすると、これによつて得られる収入も両者の共同による労務の結果であるといわざるを得ないから、たとい原告の休業により右所得を喪失したとしても、直ちにそのすべてが原告の損害であるとはいい得ず、しかも、本件全証拠によつても、右所得を生み出すについて原告の労務の寄与分は明らかでない。そして、原告の所得を証明する資料としては前掲甲第五号証が存するとはいえ、右はリサーチ会社の調査報告書であつて、内容も伝聞ないし再伝聞にわたつており、原資料としてはわずかに前掲甲第一五号証、第一六号証の一ないし一〇が存在するに過ぎず、もとより伝票、帳簿類等その他裏付けとなる資料は皆無であり、納税申告も行なわれていないことが認められるので、結局、原告の援用する右証拠によつてはその主張にかかる所得を認めるに足りないといわざるを得ず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。

次に、サンダル部品の加工による収入について検討すると、前示のとおり、原告の主張に副う証拠としては、前掲甲第五号証のほかに前掲第一四号証が存在するけれども、伝票、帳簿類等その裏付けとなる資料は存在しないうえ(原告が賃金を受領したことを証明する領収証の存在が窺われるが、これも提出されていない。)、必要経費についても、前掲甲第五号証が存するとはいえ、他にこれを詳らかにする資料はなく、また、納税申告も行なわれていないことが認められるので、原告の援用する右証拠によつてはとうていその主張にかかる収入を認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。

結局、前掲各証拠、就中甲第一〇ないし第一三号証に、成立に争いのない第二二、第二三号証及び弁論の全趣旨を併せると、原告の事故当時の収入は、第一生命保険相互会社南支社から得ていた年額一九六万五三九六円程度と認めるのが相当である。

(2) 休業損害

前記1認定の事実に、前掲証人永岡潤吉の証言、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を併せ考えると、原告は、事故発生日の翌日である昭和五四年一一月八日から昭和五五年四月二五日まで一七〇日間休業を余儀なくされ、その間合計九一万五二八〇円(円位未満切捨)の収入を失つたことが認められる。原告は、昭和五五年四月二五日以降も本件事故のため稼働不能であり、休業を余儀なくされたと主張するが、前記認定の治療経過及び自覚症状等の事実だけでは、これを認めるに十分とはいい難く、ほかに前記期間を越えて休業を要したことを認めるに足りる証拠はない。

ところで、原告が労災保険から休業補償として三九八万二一二五円の支給を受けたことは当事者間に争いがないところ、前掲甲第二三号証によると、休業特別支給金を除く休業補償給付金は二九八万六八二五円であるので、前者はその性質上損害填補の目的を持つものではないが、後者を前記原告の休業損害から差引くと、すべて填補されて余りあることが計数上明らかである。

(三)  慰藉料 八〇万円

本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、治療の経過その他諸般の事情を考慮すると、原告の慰藉料額は八〇万円とするのが相当であると認められる。

四  過失相殺

1  前記一の争いのない事実に、成立に争いのない乙第三ないし第六号証、証人岩田芳男の証言、原、被告各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

(一)  本件事故現場は、市街地を南北に通ずる、幅員五・五メートルの歩車道の区別のない、平坦なアスフアルト舗装道路上である。本件道路は、両側に商店等が立ち並ぶ交通量の多い道路であり、交通規則としては、最高速度が時速二〇キロメートル、自転車を除き車両は北から南への一方通行及び駐車禁止の各規制がなされている。なお、事故当時付近路面は乾燥していた。

(二)  被告は、加害車を運転し、時速約二〇キロメートルの速度で本件道路を南進中、進路前方左側(東側)に駐車中の普通乗用自動車を認めたので、その右側方を通過するべく、時速約一〇キロメートルに減速し、右駐車々両との間隔を保持することに注意を奪われて前方注視を怠り、対向車両の有無を確認せずに進行した過失により、折から対向進行してきた原告運転の自転車を自車前方約五・六メートルの至近距離に接近してはじめて発見し、咄嗟に危険を感じて急制動の措置をとつたが及ばず、停止すると同時に自車前部バンパー中央付近を原告の自転車の前輪タイヤに衝突させ、自転車もろとも原告を路上に転倒させた。

(三)  一方原告は、自転車を運転し、本件道路の左端寄りをゆつくりと北進中、進路前方右側に駐車中の車両を認めたので、その左側方を通過するべく進行したところ、折から前方から対向進行してくる加害車を発見したが、同車は右駐車々両の後方に停つて自車に進路を譲つてくれるものと思い込んでそのまま駐車々両の側方を進行したため、前記のとおり加害車と衝突し、路上に転倒した。

以上の事実が認められ、証人岩田芳男の証言及び原告本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、前掲乙第三ないし六号証に対比してたやすく措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  前記認定の事実によれば、本件事故の発生については、原告にも、対向して進行してくる加害車を発見しながら、その動静に十分注意を払うことなく、漫然と自車に進路を譲つてくれるものと軽信して進行した落度があつたことを否定できず、原告の年齢、前記認定の被告の過失の程度、態様等諸般の事情を考慮すると、過失相殺として原告の損害の一割を減ずるのが相当と認められる。

そして、過失相殺の対象となる総損害額は、前記三で認定した本訴請求分の損害額合計八〇万七八九〇円と、本訴請求外の損害額合計一五五万五〇六〇円(被告の主張三記載の治療費合計額、この事実は当事者間に争いがない。)の合計二三六万二九五〇円であるから、これから一割を減ずると原告の損害額は二一二万六六五五円となる。

五  損害の填補

前示のとおり、被告の主張三記載の治療費が支払われたことは当事者間に争いがなく、また、被告本人尋問の結果及びこれにより成立を認める乙第一〇、第一一号証によると、そのほかに被告が三五万円支払つた事実も認められるから、そうすると、原告の前記損害額から右填補分一九〇万五〇六〇円を差引くと、残損害額は二二万一五九五円となる。

六  結論

以上の次第で、原告の本訴請求は、被告に対し二二万一五九五円及びこれに対する訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和五五年八月一九日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で正当であるから認容し、その余の請求は失当であるから棄却し、民訴法八九条、九二条、一九六条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判官 川上拓一)

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